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Keiichi's Blog

「又私の為に危ない橋を渡ってくれているのですね

「又私の為に危ない橋を渡ってくれているのですね。どうしてそんなにまでしてくれるのでしょう。」「さあな? そう言えば、王女ってのは意外と孤独なものだと妙な事言ってたな。王族でもなかろうに。」「……。でも、イザベラさんはとても美しい人ですし、何処かの国の王女だと聞いても不思議には思えませんが。」「ははは、確かにアイツなら、王女にだって化けおおせるだろうが、あんな凄腕の王女なんて育つわけねえ。」ハンベエは少し笑ってしまった。知らぬが仏、知らぬ顔のハンベエ。この場にロキが同席していたら、腹を捩らせそうだ。イザベラにキツく釘を刺されたロキはハンベエにすら嵐の夜の秘密を一切話していない。「そのイザベラから気になる話が入って来た。」「とは?」「ボーンって奴知ってるだろう。」「お会いした事は有りませんが、ハンベエさんやロキさんのお友達だというサイレント・キッチンの諜報員だと承知していますが。」」「戦はいつだって冷や冷やものだよ。ええと、イザベラの方は今のところ上手くやってるらしい。」英文故事書「と言うと、死んだはずのモスカ夫人が実は貴族達に匿われていたと思わせるまやかしの事ですか。」「うん、何せイザベラは変装の名人だからな。」モルフィネスが群狼隊以下を使って必死に調べているところさ。だから奴も最終的に戦略を詰てはいない。」「そうなのですか。でも、今日は何やら冷や冷やしてしまいました。「実はサイレント・キッチン戦闘部隊を率いる将として、ゴルゾーラに仕える事になったらしい。」「と言うと、戦場でハンベエさんと敵同士として……。」「行き掛かり上、敵に回る事は覚悟していたさ。……諜報員として陰にいた方が手強いのか、戦場で敵に回られるのが厄介なのかはまだ分からないがな。」「心中お察しします。」「いやいや、俺はヒョウホウ者。別に気も咎めねえ。一つ安心してるのは、ボーンは王女を暗殺しには来ねえだろうって事さ。それだけは救いだ。」「腕利きらしいですね。」「うん、腕は立つ。何より己の腕に驕ったところが皆目無いのが怖いところさ。」「何でしょう。会ってみたくなります。」「……。では、次の稽古は三日後に。」本日の業務連絡をハンベエは打ち切った。 早朝の薄もやの中、ボルマンスクの空高く一羽の黒い鳥が飛んで行く。ゲッソリナからとんぼ返りの鴉のクーちゃんである。足にはハンベエからイザベラ宛の秘密通信が結わえられてえいる。空に一つクルリと大きく輪を描くと、廃墟となっている寺院の本殿にスーッと降りた。灰色のマントにすっぽり包まれて、右の前腕を突き出すようにして石段に腰掛けているイザベラのその腕にフワリと止まる。「さて。」イザベラがクーちゃんの足の密書を紐解くと、『 順調の事 祝着至極王女も又案ずるところなれば 御身大切にモルフィネス埋伏のボルマンスク歩兵にても夫人生存の疑惑拡散工作中事の成否を問わず 必生を期されたしハンベエ 』 と有った。イザベラは読み終えると無言でそれを燃やし、何処ともなく姿を消した。前にも述べたが、ボルマンスクにはナーザレフ教団の猖獗により廃墟となった寺院や神社が数多い。イザベラにとってはおあつらえ向きの隠れ家であった。その数日後、ボルマンスク宮殿の太子の部屋で、人払いの上、二人きりの場を求めたナーザレフが太子ゴルゾーラに注進していた。「ゲッソリナに放っている我が手の者の情報に拠れば、王女の前で開く定例会議の場で、我等との戦争方針を廻ってハンベエとモルフィネスが激しい言い争いをしたとの事。向こうも一枚岩ではないようです。」驚いた事に数日前の『御前会議』の内容がボルマンスクのナーザレフに筒抜けになっていた。「そうか。」ほくそ笑んで伝えるナーザレフの言葉にゴルゾーラは気のない様子で答える。「あまりお気に召しませんか? 敵の弱みですぞ。」「半月後には全軍でゲッソリナに進軍予定だ。兵力差は知っての通りだ。ただひた押しに押せば勝つに決まっておる。」

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