駄目だ。キツすぎる。
これはキツすぎる。
「うぉえ…げほっ…」
「近藤さん!!」
沖田は近藤に叫んだ。
自分達の復帰戦がまさかこんなことになるとは思っても見なかった。
まさかの防衛戦。
いや、まさかこんな状態に追い込まれていたなんて、全く知りもしなかったのだ。
「と、とりあえず斬れ!斬るんだ!!」
近藤は射撃隊を退かせるとそう叫んだ。
永倉、原田、斉藤、大体が散らばってしまっている。
相手は銃を使ってくる。
歳…。どうすればいいんだ!助けてくれ……。
その頃土方は神奈川へ着いていた。
彼が昔、韋駄天なんて言われていたのも納得できる。
だが、そんな彼も一層鬼神のような顔つきで門を見ていた。
何度交渉しても門は開かないのだ。【低成本生髮?】 什麼是生髮精油?有用嗎?
「開けてください!甲州には全然人数が足りないんだ!来てくれ!頼む!」
「だから何度言われても…」
「開けろ!今なら甲州も押さえれる!逆転だってできる!」
「そうは言っても、そちらに向かわせる程、こっちも数はいない」
『新撰組』に貸せる程、数はいないと言うのだ。
要するに余りなどいない。
「それに、この戦は」
勝てない。と言いたいのだろう。
「それでも幕軍かよ!」
土方は相変わらず開かない門に怒鳴り付けた。
「少なくとも君らよりは『幕軍』だ」
「チッ」
とんだお門違いだったな。
土方は舌打ちすると、馬に跨がった。
こうなりゃ江戸に直接行くしかねぇ。
あっちでは仲間が援軍が来るのを待って必死に戦ってんだ。
待ってろよ。
土方は再び馬で駆け出した。
「………」
「………………」
あれから夜まで激戦は続いた。
だが、美海達は今、甲州ではなく江戸にいる。
誰一人口を聞かない。
惨敗だった。
それはもう惨敗だった。
近藤の指揮が悪かったとか、鉄砲隊が悪かったとか、誰が悪いというわけではなく、もはや次元が違った。
美海も沖田も初めての薩長土戦であそこまで負けてしまうと、流石に自信を無くした。
今まで見てきたものとはまるっきり違うのだ。
まったく手足が出なかったわけではない。
最初のうちは、まだ土佐だけだったから多少の不利はあっても太刀打ちできた。
土佐は少し打つとすぐに刀に切り替える傾向がある。
刀なら新撰組だって負けちゃいない。
美海もどうにか立ち上がり、沖田と背中合わせに圧倒的活躍振りを見せた。
だが、それからが問題だった。
少しすると先に土佐軍に援軍が来たのだ。
けして多いと言える人数ではなかったのだが、今の甲陽鎮撫隊には十分多すぎる人数だった。
再び銃声は鳴り響く。
ジリジリと追い詰められた彼らは一旦林に退いた。
そこから攻撃を加えるつもりだったのだが、それも叶わず。
退いて退いて退いてついたのが結局江戸であった。
完璧なる敗北。
今もまだ局中法度を使うのならば、局長を含む全員が切腹になるところだ。
ただ、逃げざるを得なかった状態だった。
幸い死傷者は少なかったが、心の負傷者はたくさんいる。
美海は体育座りで丸まったまま、ボロボロになった腕をなぞった。
膝に乗せられた顔の目は虚ろだ。
ズキン
傷んでいるのは本当に傷なのか、心の方なのか。わからなかった。
正直、今の私には恐怖しかない。
負けた屈辱感より恐怖が勝っている。
美海は膝に顔を埋めると、カタカタと震えた。
土方はいまどこにいるのだろう。
あれから会っていない。
こんな姿を見たら、追い出されるかな?
「だから女は」って。
市村は心配そうに美海を見ていた。
沖田はもはや何か声をかける気力すらない。
「まさか…甲府城に既に入っていたとはなぁ…はは…」
近藤が一人ぼやいた。
今にも消え入りそうな笑い方。