「お任せ下さいませ。我が主のお望み通りに」
優雅な動きで全てを受け入れてしまう。最悪動きが無くても、魏兵の治安維持部隊を縛り付けることは可能だからな。
「李項、全軍を動かすぞ、最低限の防備のみを残し、京城経由で長社へ駒を進めるぞ」
「ご領主様の仰せのままに!」
長吏を兼務する李項を通して全軍に命令を下す、首都の北営軍も動かすぞ。
「先発は姜維の軍だ、international school hong kong fees 三日後に洛陽を出て各地の隊を糾合し長社を落とせ」
「蜀軍の力を見せつけてやります!」
背中から闘気が漂うかのような雰囲気を醸し出している、いよいよだというのが伝わってきた。
「陸司馬、本陣は一か月後に動かす。万事準備をしておけ」
「それだけ時間があれば色々と準備が出来ます。どうぞご安心の程を」
純粋な戦闘だけではない、陸司馬には暗殺者に対抗する準備も必要だった。戦場に出ることになれば隙も産まれてしまう、戦は数だ、中県からの増員を目論んでいる。
どこだ? 許都の東北東百キロから百五十キロあたりか。洛陽と等距離に位置していることになるな、そろそろか。目を閉じて情勢をかみ砕いて判断を行う。
「呂軍師、国内の更新情報はあるか」
「猟師を動員して、蜀盆地への間道を捜索しているとのこと。浸透してくる魏軍の早期発見に努めるということでしょう」
いつも抜けられて苦労していたからな、補給が途切れたらこちらも孤立する、ありがたいことだ。孔明先生は俺にどうして欲しいと考えているだろう?
国の負担が大きい、早めに戦争が終わるのを願っているはずだ。当然蜀の勝利以外の結果はない。魏が防衛範囲を棄てて首都を救援する可能性を考えるんだ。守備兵が不在になれば、在地の反乱勢力が必ず湧いてくる、だがそれを漫然と待っているだけではいかんぞ。
「予州、青州、冀州、魏の支配する全ての地域に存在する反対勢力を焚きつける。調略を進めるとともに軍を出す、これより決戦を行うぞ!」
「地方情報は準備して御座います。いつでも繋ぎをつけられるように備えは済んでおりますので」
「ふん、流石だな。ではその全てに蜂起を促せ、蜀は支配者の事後承認を行うと確信している」
反対者を糾合する最大にして最高の手段はその存在を認めることだ。一度政治対決になってしまえば孔明先生の独壇場に間違いないからな。
◇
雪解けが進んだ三月初頭、いよいよ進軍の機運が高まってきた。号令を掛ければいつでも軍を発することができるが、相変わらず呉はまだ動きをみせていない。まあ今さらだ、頼りにしているわけではないしな。むしろ敵だと信じて警戒しているくらいだ。
「魏延からの報告を」
「御意。本隊は南陽軍南西部築陽県に置かれていて、そこから南東の山都県と北の冠車県に前線基地を置いているようです。対する魏軍は襄陽城、樊城に主力を置き、宛に別動隊を詰めております」
相変わらず地名ではいまひとつピンと来ないぞ。地図を持って来させて視覚で補うとだ。こちらは本陣と、南東二十キロ、北五十キロに軍を割っているわけだ。相手は南東六十キロと、北東百キロあたりに居る。距離を比較的開けている状態ってのがようやくわかった。
一旦切り結んでしまえば引きはがすのも苦労するからな、攻めようと思えば二日で可能なら充分な前進基地になる。こちらの動き待ちってことだ。
「鮮卑はどうだ」
「濮陽、長垣、外貢、己吾にまで進み、許都の背後へ迫っております。その数、十万に膨れ上がっているとのこと」